6月3日午後4時に生まれたことから、剣豪・宮本武蔵にあやかって”六三四”と命名された少年は、両親から剣の指導を受け、たちまち才能を現して幼児ながらも中学生を相手に戦えるほどの腕前になった。後に地区の剣道大会に出場した六三四は、決勝戦で手強い相手と戦うことになる。その相手こそ、宿命のライバルとなる東堂修羅であった…
週刊少年サンデーに掲載された村上もとかの原作を忠実にアニメ化。当時幅広い層に親しまれた本作は、後に高校生編となる”青春編”も制作された。
■キャスト
夏木六三四:淵崎ゆり子(現・渕崎ゆり子)
夏木栄一郎:徳丸完
夏木佳代:吉田理保子
東堂修羅:羽村京子
東堂国彦:若本紀昭
十一:木藤聡子
■スタッフ
原作:村上もとか 週刊少年サンデー連載
監督:角田利隆
キャラクターデザイン・作画総監督:国保誠
シリーズ構成:山本優
美術監督:遠藤守俊
音楽:坂下秀美
岩手県でひとりの剣道少年がすくすくと育っていた。「岩手の虎」と呼ばれた剣道の達人・夏木栄一郎を父に、「鬼ユリ」と呼ばれ、やはり剣道の達人だった佳代を母に持つ、少年の名は六三四。だが、ある猛吹雪の夜、六三四は犬の十一を守るため野犬と戦って̶̶。
六三四は野犬に噛まれた傷で三週間の入院を余儀なくされた。もともと元気な六三四にとって、十一と遊ぶことも、父と稽古をすることもできない日々は、退屈で仕方がない。だが、そんなある日、六三四はひとりの強敵と偶然出会うことになる。
大石への「奇襲」に成功した六三四。だが本気になった大石は六三四に防具をつけさせて勝負する。初めて防具をつけた六三四は大喜びし大石を攻めまくるが、やはり力の差は歴然だった。大石に完敗し悔しくてたまらない六三四は、父・栄一郎にも怒られ……。
六三四は幼稚園に入った。最初は園での生活に退屈していた六三四だが、年長組から喧嘩を売られ、俄然張り切る。友達になったもなみは六三四を心配するが、六三四は見事に勝利。だが、そんな六三四を、あの大石が盛岡城へと呼び出した。六三四は大喜びで……!
盛岡城で大石と勝負する六三四。しかし六三四がいくら竹刀を打ち込んでも、大石の体にかすりもしなかった。幼い六三四にはその秘密がわからない。そんな中、祭りの夜、チンピラにからまれた父・栄一郎は六三四に足捌きを見ておけと伝え、チンピラと戦う。
「チビッ子剣道大会」に向け、六三四は闘志を燃やす。優勝候補と目されているのは米内(よない)だ。しかし、この米内よりも強い者がいた。しかも、それが女の子だと知って六三四はビックリ。見るからに気が強そうな、その女の子は「轟嵐子」といった。
六三四は怒涛の快進撃で準決勝も勝ち、決勝へと進出した。だが米内は準決勝で嵐子に敗れてしまう。六三四は米内が女の子に負けたことが腹立たしいが、自信満々の嵐子は六三四を挑発してきた。嵐子は早くも、六三四の母・佳代の再来と呼ばれる逸材だった̶̶。
六三四は嵐子に勝って優勝したが、その強さは六三四の心に火をつけた。来る日も来る日も練習に励み、表彰された六三四。彼の次の目標は、昇級試合に出て昇級することだった。だが、自分が二級になれず三級にとどまったことに腹を立てた六三四は……。
六三四は大胆にも大石にまたもや勝負を申し込んだが、大石は板垣、有吉、小野、田村の「小学生四天王」と呼ばれる強豪たちを倒してから、あらためてやって来いという。そこで六三四は、この4人と勝負することにした。果たして六三四の技は通じるのか?
「小学生四天王」を見事に破った六三四。これを受けて、大石は約束通り六三四に稽古をつけてやることにした。場所は南部中学校の体育館。早朝、まだ誰も来ていないほどの時間から、大石による激しい稽古が開始される。六三四は根性で大石に食らいついた。
全日本剣道選手権の岩手県予選が始まり、六三四の父・栄一郎は順調に勝ち進んでいく。栄一郎は六三四のためにも、今年こそ全国大会で優勝しようと心に決めていた。そんな栄一郎が確実に自分より強いと思っている先輩・東堂国彦には、息子・修羅がいた。
六三四は自分と同い年の東堂修羅と出会い、その足捌きの見事さや、息遣いの変化だけで相手の動きを察する鋭さに衝撃を受ける。再会を喜び、楽しいひとときを過ごす父たちを尻目に、六三四は修羅に勝負を申し込んだ。初めての対決̶̶その結果はどう出る?
六三四は修羅の鋭い突きを首に受けて敗れた。その晩、勝負のことを夢に見てしまった六三四は、悔しくて眠れない。そして六三四には、もうひとつ気になることがあった。勝負に勝ったはずの修羅はなぜ泣いたのだろう?そこには修羅の強さの秘密があった。
六三四はもうすぐ小学生。少年剣士の存在は、周囲でも話題となるほどだった。しかし六三四には気の休まるときはない。まずはライバル・修羅を倒さなければ道は開けてこないのだ。そんなある日、六三四は修羅の母・朝香が亡くなったことを知らされる。
次の全日本剣道大会に、あの東堂国彦が出場することを決めたという。栄一郎は、この不世出の天才剣士との勝負を控え、酒を断つだけでなく警察を辞めることまで決意した。そこまで剣に打ち込まなければ勝てない相手なのだ。六三四も父に倣おうとするが̶̶。
どうしても父と一緒に修行をしたい六三四は夏休みを利用して、ひとりで栄一郎が滞在している山寺までやって来た。早速、栄一郎の姿を見つけて喜ぶ六三四。だが栄一郎は、邪魔になるから明朝すぐに盛岡へ帰れという。これを素直に聞く六三四ではなく……。
六三四は山寺の和尚の計らいもあり、父の修行の場にとどまることになった。ここでの稽古は、敢えて短い竹刀を使うことで踏み込みを今までより鋭くするというもの。女剣士である和尚の孫・杉子を相手に特訓を続ける六三四はさらに、ある特訓方法を思いつく。
山寺での厳しい修行を終えた栄一郎は、さらに武者修行の旅に出ることにした。一方、六三四は盛岡へと帰り、父からの便りを楽しみにしながら剣の稽古に励む日々を送る。だが、そんな六三四に対して、「剣道なんて棒っきれ遊びだ」と上級生の川口が挑発する……!
ついに全日本剣道選手権の岩手県予選が始まった。まずはここで勝ち残ることが栄一郎の目標だったが、苦戦しながらも栄一郎の全日本大会への出場が決まる。一方、栄一郎のライバル・東堂も、久しぶりの試合出場ながら、さすがの実力で勝ち進んでいた??。
日本武道館での全日本大会を前に、栄一郎は六三四を連れて母校の大学の剣道部を訪れた。参加した稽古で現役部員たちも驚くほどの実力を示す栄一郎。そこにはすでに東堂も来ていた。さらに、修羅と再会した六三四が、道場で対決したいと言い出して??。
全日本剣道選手権大会が始まったが、修羅は父の勝ち方に恐ろしいものを感じていた。父はまだ本気の「突き」を繰り出していないのだ。それが出るのは六三四の父・栄一郎との対決のときだと修羅は言う。そして、その対決は準決勝というタイミングだった。
栄一郎対東堂の凄まじい対決。武道館は永遠とも思える静寂に包まれていた。緊迫の中で、東堂の突きが栄一郎の首を襲う。それでも立ち上がった栄一郎は、日本一の栄光をつかむため戦い続けた。東堂を制した栄一郎の決勝の相手は高知県の北浦だったが……。
準決勝で東堂の突きを食らったことが原因となり、栄一郎は倒れて、そのまま息を引き取った。六三四にとって、それはあまりにも悲しく、早すぎる父との別れだった。しかし六三四は父の闘魂を受け継ぐことを心に決める。剣道少年の新たなる出発である??。
六三四は盛岡から峠山へと引っ越すことになった。別れの日、もなみは六三四にキスをして再会を約束する。やがて三年の月日が流れ、六三四は小学四年生となった。しかし佳代は、息子である六三四が決して竹刀を握ろうとしないことが気にかかっていた。
東堂父子が栄一郎の墓参りに来ていたことを知った六三四は、父子が帰ってしまう前に追いつこうと急ぐ。一方、修羅は駅で亡き母から編んでもらった手袋を落としてしまったことに気づくが、国彦は構わず修羅を電車に乗せる。結局、六三四は追いつけなかった。
凶悪犯から杉子を救ったことで六三四が実は母にも内緒で稽古を続けていたことが、ついにバレてしまった。しかし、これを機に六三四は柳生の東堂父子に会いに行くことを決める。修羅との再会を果たした六三四は、修羅ではなく国彦に勝負を挑むことに??
東堂国彦は自分の喉元に迫る六三四の竹刀を敢えて、躱さずに受けた。その行為に衝撃を受ける六三四。東堂は六三四に「剣が曇っている」と告げるのだった。さらに「自分の剣の道を歩め」と言われた六三四は、自分の何が間違っていたのかと自問自答する
東堂父子との再会を通じ、またひとつ成長した六三四は心を新たにして、母・佳代と北上少年少女剣道クラブの道場へ向かった。懐かしい道場の汗の匂い。六三四は県下でいちばん強いクラブだと聞き暴れたくなるが、そこであの轟嵐子と五年ぶりに再会するのだった。
北上少年少女剣道クラブで、六三四は嵐子と剣の腕を競っていた。そんな中、クラブの監督を務める権藤が、来る県大会への出場メンバーを発表する。六年生の梶が中堅と発表されたことで道場はどよめいた。副将を命じられたのは嵐子、大将はなんと六三四であった。
県大会が始まったが、一回戦の相手は東武館。大将戦残り20秒のところで、このままでは北上少年少女剣道クラブが敗れるという状況であったが、六三四は意地で逆転勝ちを果たした。しかし六三四の左足の怪我は試合に影響が出るレベルに達しており、嵐子は責任を感じる。
準決勝の大将戦で久門になんとか勝利した六三四。だが、すでに六三四の左足は踏み込みが思うようにできない状態だった。決勝の相手である陣内は、さすがに大将だけあって、六三四の怪我を見抜く。左足を執拗に攻められ、このままでは六三四は勝てない……
県大会は北上少年少女剣道クラブの優勝に終わった。全国大会への出場権を手に入れた六三四はこれで修羅との再戦ができると心を躍らせる。六三四の目標は修羅に勝利することであり、全国優勝することなのだ。しかし、そんな六三四の思いをよそに嵐子たちは??。
北上少年少女剣道クラブのメンバーは峠山の慈光寺で山籠もり特訓をすることになった。全国大会で優勝するためには他のどんなチームよりもハードな稽古を積む必要がある。そうして初めて道が開けるのだ。だが特訓内容は厳しく、六三四さえもギブアップしそうになる
峠山での合宿の日々は続く。六三四は手応えを感じ始めていたが、母・佳代から北上少年少女剣道クラブは全国レベルではまだ「中の下」だと言われてガッカリ。そして修羅が所属する柳生剣友会は、屈指の強豪というポジションだった。六三四の闘志が炎のように燃える!
地獄の特訓はチームの心をひとつにした。いよいよ、チームは日本武道館のある東京へと向かう。権藤は県大会とは異なり、先鋒を嵐子に務めさせることにした。嵐子の負けん気の強さでチームに勢いをつけるためだ。さて、六三四たちの初戦の相手は果たして?
全日本少年剣道大会・小学生の部が開幕。梶たちが偶然、稽古を見てしまった佐賀の赤心館は、なんと去年の全国第3位という強豪だったが、苦戦の末、北上少年少女剣道クラブが勝利をおさめた。この大金星で波に乗った六三四たちは決勝トーナメントを目指していく。
さすが全国大会だけあって決勝トーナメントへの道のりは遠かった。北上少年少女剣道クラブは辛勝を続けながらもなんとか進出を果たし、準決勝で柳生剣友会と対決することに。だが六三四は愕然とした。柳生剣友会では修羅は大将ではなく、先鋒だったのである。
修羅と勝負ができないと悔しがっていた六三四に、母・佳代はひとつの可能性を示唆した。もし両チームの勝負が「引き分け」となれば、代表戦という形で六三四と修羅の戦いが実現するかもしれないのだ。不敵な笑みを浮かべる六三四に、修羅も気づいていた。
代表戦で敗れた六三四。しかし、その心は晴れ晴れとしていた。六三四と修羅は、六年生となる来年はお互いに個人戦にも出場し、日本一を競おうと約束して別れる。そして六三四の、さらなる修行の日々が始まった。そんなとき、小学校に新任教師が赴任してくる。
六三四は中学生の剣道大会を見て、まだまだ険しく長い剣の道をあらためて意識する。特に黒山中学の阿久津の存在は六三四の心を揺さぶった。一方、八重樫先生の穏やかで優しい性格は、周囲に好影響を与えていた。佳代もまた、八重樫には心を開いていて……。
権藤から教えられた「守破離」の考え方を基本に、修行を続けている六三四。だが、怖いもの知らずなのは相変わらずで、今度は阿久津が主将を務めている黒山中学の剣道部に「道場破り」に行くのだった。部員たちの気性の荒さを知る嵐子は心配するが??。
部員たちの中で、やはり阿久津は圧倒的に強かった。これを感じて、むしろ喜んでいた六三四に阿久津は本気で戦うことを決意する。六三四もまた、ここぞとばかり、これまで練習してきた自己流の「上段の構え」を見せた。緊迫する、ふたりの戦いの行方は……?
とどまるところを知らない六三四の勢い。今度は高校生に対して稽古をつけてほしいと直訴した。高校生が本気でやったら、お前をバラバラにしてしまうと断ると、むしろ六三四は大喜び。ところが六三四は止めに入った警官に竹刀を打ち込んでしまい……。
六三四が嵐子にあげた、十一の子ども・プーがぐったりしていた。嵐子は六三四を呼び、ふたりで獣医のところへ連れて行こうとするが、間に合わずプーは息を引き取る。悲しみに暮れる嵐子。そして六三四は、父・栄一郎が死んだ日のことを思い出していた。
六三四、小学六年生の春??。今年も、夏の全国大会へ向けての予選となる県大会が近づいていた。これに勝つことが修羅との再戦の条件なのだ。しかし梶たちが抜けた現存メンバーの戦力は去年よりも若干劣っていた。そんな中、六三四はもなみと再会する。
夏の全国大会が近づく中、六三四だけでなく修羅もまた、ライバルとの再戦に闘志を燃やしていた。そんなある日、修羅は道で謎の老人に「打ち込んできなさい」と言われるが、老人は全く隙がなかった。やがて修羅は、老人が父や栄一郎の師・韮山練造だと知る。
いよいよ始まった日本武道館での全国大会。今年は、六三四も知らなかった強豪たちがたくさん出場していた。その中でも六三四は自分と同じ上段の構えをとる熊本の有働に注目していたが、なんと個人戦の初戦で、六三四は有働とぶつかることになった??。
有働を見事に破った六三四は個人戦のベスト8に残った。もちろん修羅も勝ち残っている。また鹿児島の日高剣介も不気味な存在感を見せていた。その日高と準決勝で戦うことになった修羅だったが、激戦の末、修羅が勝利。決勝戦は六三四VS修羅だ!
修羅は六三四の上段の構えを意識し、それに対抗する技を練り上げて、この全国大会に臨んでいた。途中までは一本対一本、次こそが日本一を決める最後の勝負となる。お互いが相手の出方をうかがう中、ついに六三四が仕掛けた。それは六三四が初めて修羅に勝利した瞬間だった。