夜空を舞う2翼の<鴉>。それらはやがて人型へと姿を変え、剣を交わらせる。<街>を守護する唯一の存在である<鴉>。しかし一人しか存在しないはずの<鴉>が、なぜ?そして、3年後。新宿で頻発する<吸血鬼の仕業であるかのような>謎の殺人事件。この街では、こういった事件が数多く発生しているのだった。
赤いZに出合ってしまったものは、そのトンネルから出られなくなる。そんな都市伝説がまことしやかにカーラジオから流れ続ける街、新宿。それをあざ笑うかのように、今日も首都高速のトンネルで発生する怪奇な事件。連続する“一風変わった”事件と、“一風変わった”同僚の鷺坂の態度に困惑し、苛立ちさえ覚える呉。そんな時、鷺坂は「事件が連続するトンネル付近で目撃された男の似顔絵」と「新宿駅前トイレでテレビクルーの取材に答える謎の男」に奇妙な符号を得る。
炎の中から現れたのは、御座化した鵺だった。ゆりねは鵺を斬るよう命じるが…。一切の個を捨て<鴉>となったはずの乙羽に残る、何か。「いつかお前は人に戻るときが来るやも知れぬな」自嘲めいたゆりねの呟きは、何を意味するというのか。一方、二人の仲間を失った御座衆は、ついに鴉抹殺にのり出した。鎌鼬と土蜘蛛はそれぞれ、新宿区内にある病院を目指す。
土蜘蛛、鎌鼬による策略によりさらわれたゆりね。それによって鴉から人間へと戻った乙羽。そのころ、退院した鷺坂と呉は連続する怪事件の捜査を再開し、事件の真相に乙羽と鵺が関っていることを突き止めた。また、東京に起る異変を調査している女鴉・炎も事態の収拾に動き出す。
ゆりねの呪縛から開放され、自らも御座となった廻向の次なる目的は、新宿という街そのものの改造にあった。鵺とその弟の体に密かに組み込まれていた、ある仕掛け───鵺兄弟がふたたびまみえることでその仕掛けが発動し、新宿の街に突如、出現した機械根。それは人間を次々に襲いはじめる。それは御座となった廻向の体を支えるための、エネルギーチャージャー、巨大な御座玉だった。外界から新宿を遮断し、街そのものを巨大な御座へと変貌させようとする廻向。それは世界への宣戦布告なのか?
東京に終結する他エリアのゆりねと鴉たち。事態の収拾が付かない場合、彼らの手によって東京そのものが破壊される…かつてのソドムとゴモラか、京の都か…。そして、新生した鴉(乙羽)と廻向の最後の戦いの火蓋が切って落とされた。事態の監視役だったはずの女鴉・炎も参戦し、激しさを増す戦い。しかし強大な廻向の力の前に苦戦を強いられる乙羽と炎。やがて二人は、囚われの身となっている鵺とその弟によってもたらされていることを知る。