大怪我をして倒れていた青年。彼は、エルルゥと名乗る少女に助けられる。自分の名前も過去の記憶も一切なくした彼の顔には奇妙な仮面が被せられており、外すことができない。エルルゥの祖母で村長でもあるトゥスクルは、青年に息子の古着を与えた。エルルゥと妹のアルルゥは、そこに亡き父の姿を重ねてしまい…。
ムティカパによって、次々と村人たちの命が奪われていく。そして翌晩もムティカパは現れた。ムティカパの拡大していく被害を前になす術のない住人たち。だが、青年があることに気付く。勝機が見えた青年はムティカパの退治を村人たちに提案する。罠へと誘導し、弱点をつくのだ。だが、それには囮となる者が必要だった…。
夜、ハクオロは妹ユズハの病のためにトゥスクルに度々往診を依頼していたオボロと出会った。隠れるように住むオボロたちに違和感を覚えつつも、ユズハから懇願され、再びの逢瀬を約束することになるハクオロ。そんな中、宿敵である侍大将ベナウィと遭遇したオボロは、馬上からの一瞥に渾身の一撃で斬りかかるが…。
倉に忍び込んだ賊を追い、藩主ササンテたちがヤマユラの集落にやってきた。だがトゥスクルはまったく相手にしない。その態度に怒ったヌワンギは、彼女を捕らえる指示を出す。反抗しようとしたアルルゥは逆に兵士から切り付けられる。あわやというとき、トゥスクルが身を挺してアルルゥを守り、大きな傷を負ってしまい…。
蜂起したハクオロたちの最初の戦いが終わった。そして彼らは藩主の屋敷跡を整備して、陣を構える。やがて迎える皇軍との戦いに備えて訓練を行う一方、近隣の集落に助力をもとめようと試みるハクオロたち。しかし、叛乱軍の討伐に執念を燃やすインカラ皇は、残虐な方法で、容赦なく彼らを追い詰めようとしていた…。
インカラ皇の信頼を得たヌワンギは、兵を率い村々への襲撃を続けていた。一方、ハクオロのもとには、残った集落の村長たちが傘下に加わるべく集まりつつあった。ある日、塀を上って屋敷に入り込もうとした男が捕らえられる。商人と名乗る胡散臭い男に、ハクオロは水と食料を分け与え、すみやかに立ち去るよう伝えるが…。
ハクオロ軍は勢力を広げ、インカラ城のある皇都を取り囲みつつあった。決戦のときがきた。敵兵を一太刀で叩き切るオボロを先頭に、インカラ城へ攻め込む叛乱軍。一方、インカラ皇の不興をかって投獄の身だったベナウィは、牢を抜け出し、国と運命を共にする覚悟のもと最後の戦いに赴くべくハクオロの前に立ちはだかる…!
第二の戦いを経て、ハクオロは皇となった。だが国家を統治する身の彼を待ち受けていたのは、膨大な執務の山である。執政の毎日を過ごす彼のもとに、ある日、美しく気高い客人が現れる。彼女の名はウルトリィ。大神“ウィツァルネミテア”を奉る神官とも言うべき一族の、皇女にして巫女、そして“調停者”だった…。
突如、大国の使者が訪れる。「天子ニウェに絶対の忠誠を誓え!」迫る彼らの無礼きわまる態度にも、終始冷静に従うハクオロ。彼の“トゥスクル国”に対し、ニウェの大国“シケリペチム”、その国力差は、兵力にして約十倍。そして大国“シケリペチム”の進撃が開始された。そんな圧倒的戦力に対して、ハクオロは…。
人を売り買いする貿易船が暴風のため難破した。その船底の檻から逃れ、ただ一人生き残った女、カルラ。そして牢の中で目覚めたカルラは、しかしやすやすと牢を破ってハクオロの前に現れる。「私をナ・トゥンクに引き渡すのかしら? それとも斬り捨てるおつもり?」彼女の問いかけに、ハクオロは意外な答えを返す…。
ハクオロはウルトリィを使節とし、ニウェに対抗すべく近隣諸国と同盟を結ぶ。容易に攻め込まれぬよう兵力を拮抗させるためだ。だが、その“調印の儀”が行われているさなか、テオロが敵襲を知らせるべく、駆け込んできた。集落の皆の身を案じるハクオロに、テオロは「心配すんな、負けんなよ」と拳を上げてみせるが…。
「裏切り者よ! その罪、死をもって償うがいい!」とハクオロを罵り、彼に突き進む敵将オリカカンと騎馬兵。その中、敵将に助太刀する誇り高き、女剣士トウカの刃が閃光を放ち、あわや、カルラの首輪をかすめる。自分自身が行なったという残虐行為を聞かされ、過去の記憶を持たないハクオロは、疑惑と苦悩に苛まれる…。
正義を重んじる“エヴェンクルガ”のトウカが敵方についていることで、トゥスクルの兵や民たちに動揺が走る。自分が何者かわからぬ不安から逃れるように、ハクオロは、毎夜、酒を飲んでいた。エルルゥはそんな彼を優しく叱り、励ます。少数の騎馬兵を率い、決戦に赴くハクオロたち。対峙した彼らの前にトウカが現れて…。
シケリペチムの軍勢が国境を越え、トゥスクル国への進撃を開始した。敵の襲撃は日を追って増えていき、犠牲者も相当数にのぼって行く。なぜか一気に攻め込んではこない敵の企てをベナウィは見抜く。そのころニウェは精鋭の兵を集め、さらに彼らに対し何らかの施術を行っていた。そしてニウェの傍らには、謎の男の影が…。
シケリペチムを迎え討つべく、兵を率いて国境へと向かったベナウィたち。その一方、ハクオロは、エルルゥとカルラ、トウカを伴い、シケリペチム本国にあるニウェの城を目指す。それを察したニウェは皇の間でハクオロを待ち構える。そして城の門を突破したハクオロたちの前に、三人の猛者が立ちはだかるのだった…。
戦は終わった。だがハクオロの脳裏からは、あの戦いのおぞましい記憶と、ニウェが自分に向かって放った“言葉”がいつまでも去らない。苦悩するハクオロに、エルルゥは優しく声をかけ、かいがいしく世話を焼く。そんな折、カミュの身にちょっとした異変が起きる。そして、彼らを、ひそかに見つめる人影があった…。
エヴェンクルガの武人、ゲンジマルがハクオロに引き合わせたのは、クンネカムンの皇クーヤだった。民の大神と聞かされてきたウィツァルネミテアが、彼らシャクコポル族にとっては忌むべきヌグィソムカミであることを知ったハクオロは、心に拭えぬものを覚える。そしてゲンジマルがハクオロのもとに再び遣わされてきて…。
かつてカルラが囚われていた國ナ・トゥンクで叛乱の火の手が上がった。叛乱への支援を乞うカルラ。その彼女の強引な手管に観念したハクオロは、カルラやエルルゥ、ウルトリィ、トウカたち共々、ナ・トゥンクへと旅立つ。そして目的地に着いた早々、一行は叛乱の頭目デリホウライとまみえる。そこに敵の襲撃が…。
ハクオロの一行は傭兵としてデリホウライの隊に加勢した。そんな中、カルラの示唆で少数なら地下水路より城内へ忍び込めることが判明、デリホウライは決戦を決意する。そして、ついに皇の間へとたどり着くデリホウライとハクオロたち。そこで相対したのは、死者を苗床に咲かせた白き花園にまみれる酷き皇の姿であった…。
トゥスクル城に侵入した賊はゲンジマルの孫、サクヤだった。彼女がクーヤの使いであることを見抜いたハクオロはクーヤと密会する。だが、用件とはサクヤをハクオロの側室に差し出すことであり、その場をエルルゥに見られてしまう。そんな若き皇が別れ際に残した言葉の通り、クンネカムンには戦雲が近づきつつあった…。
後顧の憂いをなくすために天下を統一すべきと云う部下ヒエンの言葉に揺れるクーヤ。一旦は自國の守りに専念することを銘ずるものの、他國の侵攻に虐げられるクンネカムンの民の声に天下統一に打って出ることを決意する。オンカミヤムカイは、迫るアヴ・カムゥの脅威に対し、超絶の力“大封印”を以って迎え撃つ…。
クーヤからハクオロ確保の命を受けたアヴ・カムゥ隊がトゥスクル城に侵入した。策を講じたとするハクオロは部下たちに撤退を命じ、自らは敵を引き付ける囮となるが、それこそ無策のハクオロに出来る唯一の戦略であった。ハウエンクアのアヴ・カムゥに蹂躙されるハクオロ。その脳裏に突如、失われた記憶の断片が浮かび…。
アヴ・カムゥが破壊され、ハクオロ捕獲に失敗したと聞き動揺するクーヤ。ゲンジマルは、クンネカムンの破滅を避けるため全土統一の意を翻すよう諫言するが、幼き皇の苦渋の決断に撤退はなかった。一方、大きく戦力を失ったトゥスクル軍は戦略に窮し、またハクオロとエルルゥは甦りつつある記憶にそれぞれ苦しんでいた…。
新たな賢大僧正ウルトリィの号令の下、同調した各勢力を伴い攻めるトゥスクルの前に、クンネカムンも陥落しつつあった。そんな中、敗戦を前に決死の覚悟で挑んでくるクーヤに対し、ハクオロはゲンジマルの手を借りてそのアヴ・カムゥを討つ。そして自らをクーヤの刃に晒し、頑なだった彼女の心を諭すことに成功するが…。
ゲンジマルは散り、全てを失ったクーヤは我を失い、クンネカムンの城下は炎に焼かれた。現世をさまよう旅に決着をつける覚悟を決めたハクオロは、覚醒した“ムツミ”に身を奪われたカミュを取り戻すため、そして分かたれた自身の本性が仇なす宿業を収めるために、ディーの居所オンカミヤムカイの宗廟へ発とうとするが…。
魔獣となり、持てる力を解き放って戦うハクオロとディー。壮絶な争いの中、因縁の始まりの全てを思い出したハクオロは、自らの子であるヒトたちへの干渉を繰り返してきた自分らの業を押し留めるため、分身ディーを取り込み一つの存在へと戻る。そして皆の前で、ハクオロは自身をウルトリィに封印させようとするが…。