打者として、また右投手としてカムバックを果たした星飛雄馬は再びかつてのライバル・左門豊作や、花形満との対決に闘志を燃やしていた。そして阪神にやって来た助っ人外人・ロメオ南条も、新ライバルとして飛雄馬の前に立ちはだかる。打ち込まれ2軍落ちした飛雄馬は、ゴルフから新魔球のヒントを得、後輩の丸目太の協力を得て遂に「大リーグボール右1号」を完成させる。ボールの実体をとらえられないライバルたちをキリキリ舞いさせ、飛雄馬は不死鳥のように甦ったのだ。飛雄馬は大リーグで活躍すべくアメリカへ旅立つ。
■キャスト
星飛雄馬:古谷徹
花形明子:白石冬美
花形満:井上真樹夫
伴宙太:八奈見乗児
他
■スタッフ
原作:梶原一騎(作)
川崎のぼる(画)
脚本:金子裕
城山昇
荒木芳久
構成:今沢哲男
演出:今沢哲男
永丘昭典 他
作画監督:香西隆男
荒木信吾
原画:前田実
鈴木欽一郎 他
美術監督:小林七郎
編集:鶴渕充寿
高橋和子
音楽:渡辺岳夫
協力:読売巨人軍
伴と共に母校・青雲高校野球部創設10周年の式典に参加した飛雄馬。壇上でスピーチ中の飛雄馬の元に、弱体化した野球部への好待遇に憤懣を持つ、丸目太を頭にしたレスリング部員たちが乱入。式典を壊していく。飛雄馬は「確かに過去の栄光よりも今が大事」と答え、丸目の行動を通し現在の野球部員たちを叱咤する。だが激高納まらない丸目は、飛雄馬に食いかかった。丸目に、「自分の球を受け取ったら勝ちだ」と勝負を挑む飛雄馬。剛速球を受け取れず、何度も果敢に挑む丸目。それは飛雄馬流の精神育成の方法だった。
今や、向かうところ敵なしの飛雄馬。その頃花形は、プールの水を浄化していく強烈なジェット水流を使い、飛雄馬の剛速球に対する過酷な特訓を強いていた。対・ヤクルトスワローズ戦。絶好調の花形に対し、長島監督は飛雄馬をリリーフとしてマウンドへ送り出した。右打者の花形満、が、花形はなんと左のバッターボックスに立った。「左投手から右投手として復活した君への、僕なりの挑戦だ」。緊迫した戦いを続ける飛雄馬と花形。飛雄馬の投げた勝負球を打った花形の打球は、ホームランすれすれの球となるが…。
対・阪神タイガース戦。完投まであと一人。が、内野の守備の乱れから掛布・田淵と塁に出してしまう。迎えたバッターはロメオ。奇妙な動きをしながら打席に立ったロメオは、飛雄馬の投げた剛速球を3ラン・ホームランに。マウンドに崩れ落ちる飛雄馬。気分転換にと飛雄馬は、バレーボールの試合を観戦。そこにはサンバのリズムを感じながら試合を運ぶブラジルの選手たちと、そのリズムを狂わせることで翻弄していく日本の選手たちの姿があった。飛雄馬もまたリズムを狂わせる投法で、再びロメオとの対決へ挑んでいった。
星飛雄馬対策に頭を悩ます左門が球団関係者に依頼したのは、飛雄馬の投球フォームを映したフィルムだった。左門がピッチングフォームから見いだした、飛雄馬打倒の秘策。対・大洋ホエールズ戦。試合の最中、左門は星の弱点を間近に見ることで、秘策に確信を得ていた。星の絶好球を、左門は見事にクリーンヒット。さらに続く打席では、ホームランを放つ。しかもこの日、左門は飛雄馬からサイクルヒットを放つ大活躍ぶり。左門にピッチングを完全攻略された星。落ち込む飛雄馬に、長島監督は「二軍へ行け」と命じた…。
大洋ホエールズのメンバーたちに詰め寄られ、飛雄馬の投球を読み取る秘密を告げる左門。肝心の飛雄馬は、その理由にまだ気づいていない。「俺のピッチングにどんな欠点があるというんだ?!」。その日の夜を境に、行方をくらました飛雄馬。その行方を必死に探す伴宙太。傷心のまま父・一徹のもとを訪ねた飛雄馬を発見した、伴。伴は飛雄馬のピッチングに付き合いながら、その欠点を共に探ろうとする。そのやり取りを観ていた王貞治は、「君の投げる球筋をすべて当ててやる」と宣言、すべてをピタリと言い当てていく。
球筋を読まれないための秘策を練ろうと、二軍で練習に励む飛雄馬。季節は夏、テレビでは高校野球の開始を告げるニュースが。飛雄馬の出身校・青雲高校が驚異的な躍進を続けていた。が、急に試合への出場辞退を申し出た。理由は野球部に入団した丸目太が、他校の応援団と喧嘩沙汰になったことからだった。責任を追い、退学を申し出た丸目。その丸目を、青雲校野球部の後援会長を勤める伴が巨人軍のグラウンドへ連れだした。一軍復帰を賭け練習中の飛雄馬に、伴は男と男の勝負を頼み込む。勝負に負けた丸目は…。
飛雄馬との対決に破れた丸目太は、野球への未練をなんとか断ち切ろうとしていた。丸目が現れたのは、巨人軍の宿舎。目的の飛雄馬は、二軍の地方遠征に参加。その話を聞いた丸目は、自分の揺らぐ気持ちに蹴りをつけようと、飛雄馬を追いかけ二軍の地方試合へと駆けつけた。抜群の投球で飛雄馬は、相手打者をきりきり舞いさせる。飛雄馬、一軍復帰の予感。そして誰もいなくなったグラウンドでは、丸目が飛雄馬の球を黙々とキャッチし続けていた。「俺のミットが唄ってやがる」。ふたたび野球の道に目覚めた丸目は…。
型破りの新人として巨人軍入りした丸目太。規則を破った者は逆立ちで部屋まで歩くという寮の規則にのっとり、入寮そうそう規則違反をした丸目は、飛雄馬ともに逆立ちで4階の部屋まで向かう。飛雄馬に対抗意識を燃やす丸目。一方飛雄馬は、新投法取得のため、黙々と深夜の練習に励んでいく。サンドバッグさえ投げ破る飛雄馬の剛速球。しかもその球には、鉛を仕込んでいた。舞台は、二軍の試合へ。冴え渡る飛雄馬の投球。さらにピンチヒッターとして丸目が打席へ。血気盛んな丸目はプロの洗礼を浴び、逆上してしまう。
「俺は目指す、右投手用大リーグボールを」。決意を決めた飛雄馬は、その糸口を見つけようと一人もがき苦しみ続ける。そのヒントを与えたのは、昼飯に寄ってきた蠅が箸を逃げる動きだった。さらに風圧でバットを避ける紙ヒコーキの動きを見て、新魔球の構想が少しずつ見え始めた。空気の抵抗を活かす…飛行機が上昇し飛んでいく原理を知った飛雄馬は、さらにテレビで観たF-1レースを通し、空気抵抗にその秘策を見いだした。みずからF-1マシンに乗り込んだ飛雄馬。彼は、暴走しスピンした車の中で一つの確信を得た 。
右投手用大リーグボールのヒントをつかんだ飛雄馬は、魔球完成のための猛特訓を開始した。飛雄馬はサイドスロー投法を用い、ボール原寸大の小さな隙間を通そうとしていた。舞台は二軍のグラウンド。すっかりノーコン投手に舞い戻った飛雄馬。理由は魔球習得のためと確信した伴は、壊れた左腕の二の舞になることを恐れ、魔球完成を止めようとするが、飛雄馬は「たとえ右腕を壊そうと悔いはない」と強く宣言。一人、秘密裏に特訓を続けていった。そしてついに、ボールが小さな隙間を通り抜けた。さらに飛雄馬の特訓は…。
二軍の合同練習を離れ、一人黙々と大リーグボールの完成のための訓練を重ねていく飛雄馬。神社の階段に並べた蝋燭の火を、投げた球で下から上へ一気に吹き消していく球が完成。「大リーグボール右一号はこれだ」。完成した大リーグボール右一号を丸目に受けさせるため、練習場へ。投げたボールを身体で受け、失神してしまう丸目。「俺、取れねぇ。怖いんだよ」。完成した魔球を、受けるキャッチャーがいない。丸目はその怖さを克服するための特訓を開始。そして長島監督をバッターに迎え、ついに2人は魔球を披露した。
魔球を間の辺りにし、驚愕を覚えた長島監督。「野球の常識を覆す恐るべき魔球。どえらいボールだ」。さらに王貞治も打席に。「まるで蜃気楼だ」。大リーグボール右一号を手に、一軍入りした飛雄馬と丸目。迎えた対・大洋ホエールズ戦。バッター左門を迎えたところで、飛雄馬がマウンドに。「これが大リーグボール右一号だ」。その球筋を見て、驚愕を覚えた左門。「まるで幻覚を見ているようだ」。映像に映っていたのは、いくつも現れては消える幻のような球だった。二打席目の勝負、左門はバントをしようとするが…。
冴え渡る大リーグボール右一号。王貞治いわく「蜃気楼ボール」は、今や向かうところ敵なし。しかもそのボールをキャッチできるのは、丸目太のみ。その傲慢さから丸目は、行きつけの寿司屋で大リーグボール右一号を完成するまでの流れを語り始めた。その話をカウンターの側でジッと聞き入る男がいた。その男は、花形モータースの社員。だが花形は、社員からもらった情報を見ることなく消し去り、みずから魔球を打ち取る秘策を得るため、F-1マシンに乗り込んだ。雨のためマシンはスピン。花形は怪我を負い入院するが…。
「花形さん、蜃気楼ボールはあなたに勝ってこそ初めて完成するんです」、そうつぶやく飛雄馬。その頃花形は、大リーグボール右一号打倒のためテニスボールを打ち込んでいた。花形が気づいた蜃気楼ボールの正体。それは残像現象による目の錯覚だった。さらに水面を走る石を打つことで、蜃気楼ボール打倒の秘策に確信を得た花形。対・ヤクルトスワローズ戦、マウンドに立った飛雄馬は、花形に蜃気楼ボールで戦いを挑んでいく。打つ瞬間目を閉じた花形。ボールの残像を消すことで打球をミートした花形だったが…
サインを無視した身勝手なプレイで勝利のチャンスをつぶした丸目太に、長島監督は二軍行きを命じる。「野球はチームワークだ。それを乱す奴は下ろされる」。ふて腐れる丸目。ファームでの対・阪神戦。「地獄の底から帰ってきたよ」。打席に立ったのは、丸目のかつてのライバル難波爽だった。彼は学生時代に天才児と呼ばれながらも、病気で野球を断念。その難波が、阪神の選手として甦った。血を吐きながらも好打を見せる難波。彼は不治の病に陥った僅かな命を燃やそうと、飛雄馬との勝負を夢み病院から通い続けていた。
迎えた阪神タイガース戦。阪神逆転のチャンスに、リリーフとして飛雄馬と丸目がマウンドへ。阪神も、打倒飛雄馬対策として、無名の天才児難波を打席に送り出した。蜃気楼ボールのみに焦点を当て勝負を挑む、難波。だが、丸目は対決を拒否。ヒットを放った難波は、飛雄馬に「つまらぬ同情で勝負を逃げないでください」と告げる。死を賭けて挑む難波。その気持ちを受け取った飛雄馬は、再び蜃気楼ボールで難波に勝負を挑んだ。打球をミートした難波だったが、彼の身体はその一打によって選手生命を絶たれてしまった。
謎の強豪選手ゴスマンが、来日。気性激しいゴスマンは、米リーグから追放された身。そのゴスマンが、飛雄馬に蜃気楼ボールとの勝負を挑んできた。対・広島カープ戦、突然バックスクリーンに男が現れた。その正体は、ゴスマン。彼は強引に試合に乱入し、飛雄馬に勝負を挑もうとするが、警備員に阻止されてしまう。そのゴスマンは、巨人二軍選手や丸目に傷を負わせ、無理やり勝負を挑んできた。ゴスマンと命を賭け対決する飛雄馬。ゴスマンは死神打法を武器に蜃気楼ボールに挑むが…当たった打球はゴスマンに命中した。
深夜ラジオ番組の人気女性DJ咲坂洋子に惚れ込む丸目。その洋子がリスナーの支持を受け、飛雄馬の取材に訪れた。野球のことを何も知らない洋子の取材を、飛雄馬は拒否。だが、番組のスポンサーである伴重工業の常務、伴の願いもあり、改めて取材に応じた飛雄馬。でも当日、取材は中止に。理由はリスナーから届いた「番組を聞きながら死ぬ」と自殺予告したハガキの主を探すため。鎌倉の消印を頼りに洋子と飛雄馬は少年を捜索。海辺の崖の上で少年を発見し、自殺を止めた洋子。その姿を見て飛雄馬は洋子の素顔を理解した。
飛雄馬に強い関心を寄せる咲坂洋子。その洋子が、丸目の誘いをきっかけに飛雄馬と再会する。互いに心惹かれあう飛雄馬と洋子。対・ヤクルト戦での花形との対決。球場に洋子がいることを知った飛雄馬の心は、揺れていた。迷いのもと投げた蜃気楼ボール。花形の打った打球は、飛雄馬の顔面を直撃。怪我により、病院で眠る飛雄馬。彼は亡くなったかつての恋人、日高美奈の幻影を想い出していた。洋子は飛雄馬の過去をすべて受け止め、あえて飛雄馬のもとを去ろうと決意。飛雄馬も洋子の気持ちを希望を持って受け止めた。
蜃気楼ボールを破るためのプロジェクトを発足した大洋ホエールズ。飛雄馬を打ち取る刺客に使命されたのは、左門豊作だった。蜃気楼ボールの正体は、飛雄馬のサイドスローによる直球投げが産み出す残像によって。だがそこには、それ以上の秘密が隠されている。左門は深い謎を解くため、チームを離れ一人秘密特訓へ。その左門が見いだした蜃気楼ボールの正体は、音速を超えた現象「ソニックブーム」にあった。理論的に見破った左門は、それを実践するため飛雄馬との対決に。左門が打った打球は、ホームランを記録した。
左門が蜃気楼ボールをホームランしたのは、偶然起きたつむじ風がボールの残像を消したことでの結果。その偶然を必然に変えようと、花形はコンピューターを駆使し、蜃気楼ボールを映像として再現するが、攻略までには至らない。その姿を観た星一徹は、大リーグボール養成ギブスを身につけさせ、一徹みずから花形をコーチしながら、滝を落ちる木の葉を打ち抜くツバメ返し打法を身につける特訓を施していた。ただしこの特訓は、花形自身の筋肉さえも破壊してしまう怖さも秘めていた。そして花形は新打法をつかむが…。
満身創痍のもと、星一徹と共に自宅に戻った花形満。一徹は伴に告げた、「飛雄馬と伴との戦いが再現される」「明日、野球地獄の日が燃え尽きる」と。迎えた、対・ヤクルト戦。飛雄馬は、完全試合達成目前。最後の打者として花形は、これが野球人生最後の戦いと死地へ赴く気持ちを胸に打席に立った。「まさか野球生命を賭けて…」。飛雄馬は男の魂を賭け蜃気楼ボールを投げた。ツバメ返しで打った打球は見事ホームラン。だが、その時の後遺症が身体を蝕み、花形は倒れながら本塁へ。その姿に、惜しみない拍手が球場中を包み込んだ。
星一徹が部屋で倒れ、病院へ。その頃飛雄馬は、蜃気楼ボールを駆使し、長島巨人軍を優勝に導いていた。一徹は「飛雄馬には告げるな」と、見舞いに訪れた伴に言伝てた。伴は苦悩の末、飛雄馬に「親父さんの命は長くない」と告白。「日本シリーズに勝ち、巨人の星に輝いたとき、その報告をしにいきます」。テレビ越しに息子の雄姿を見つめる父親。自ら編み出した魔球の数々を投げ、その悲願を達成。飛雄馬が完全試合を演じ、”巨人の星”として輝きを放ったとき、星一徹もまた輝く星となった。そして飛雄馬自身も新しい決意を胸に、大リーグの地へと旅立った。