平成学園に入学した藤巻駿は、オリンピックで金メダルを取る夢を抱く中学1年生。しかし入部した男子体操部は県最下位レベルだった。素人ながらも天性のセンスで体操演技を習得する駿は、そのガンバりで、やる気のなかった他の部員たちを変えていく。
■キャスト
藤巻 駿: 阪口大助
新堂雄一: 松本 大
内田 稔: 佐々木 望
真田俊彦: 三木眞一郎
東 伝次: 宇垣秀成
折笠麗子: 桜井 智
上野良夫: 伊倉一恵
岬 絵莉: 本多知恵子
おばあちゃん: 堀 絢子
相楽まり子: 松本梨香
ナレーター: 森 たけし(よみうりテレビ)
■スタッフ
原作・作画:森末慎二・菊田洋之(「ガンバ!Fly high」小学館「週刊少年サ ンデー」連載)
企画:諏訪道彦(よみうりテレビ)
シリーズ構成:千葉克彦
キャラクターデザイン:本橋秀之
美術監督:中村光毅
色彩設計:いわみ みか
撮影監督:伊藤修一、小林 潔
編集:松村正宏
音響監督:浦上靖夫
音楽:芹澤廣明、石黒 彰
監督:亀垣 一
平成学園中等部に入学した藤巻駿は、オリンピックの金メダルを取るという夢を抱き、体操部に入部する。だが4人しかいない部員の一人が足を捻挫してしまったために、駿はいきなり選手として翌日の大会に出場するハメになってしまう。
跳馬を前に青ざめる駿。彼は跳び箱恐怖症だった。会場の外の公園で古タイヤを跳馬に見立てて飛び越す練習をしようとする駿だが、“跳ぶ”ことの恐怖を思うと身がすくんでしまう。そんな駿の前に女子体操部のキャプテン折笠麗子が現れる。
昨日の大会を見ていたクラスメイトの影山に「1.0クン」とバカにされる駿。しかしまだ倒立ができない駿は、影山の逆立ちを見て何も言えなくなる。一生懸命に倒立の練習をするが、自分ばかりか体操部の先輩の事までバカにされ、売り言葉に買い言葉で影山と倒立で勝負することになってしまう。
真田の指導でバク転の練習を始める駿。何とか回転ができるようになったとき、麗子がマットの端へ立ち、ここまで跳んでこいと言う。勇んでバク転をする駿だが、ぜんぜん前方へ進んでいかない。ジャンプ力が足りないと思った駿は、腰の力を鍛え始めるが、原因は他にあった。
岬コーチに体操場の鉄棒を撤去させまいと、男子体操部はその存在意義をアピールするために競技会を行うことになった。内田たちの考えた作戦は「とにかくウケを狙う」こと。注目と歓声が集まれば、岬コーチも認めてくれるだろうと考えたのだ。しかし駿は、それでいいのかと不安になる。
結局、鉄棒を失ってしまった駿たちは、「鉄棒ならあるよ」という少年・光太郎に連れられ、庭に立派な鉄棒が建つ家に忍び込んだ。そこでムーンサルトをキメる光太郎。驚く駿たちの前に、光太郎にムーンサルトを教えたというおばあさんが現れる。
光太郎の母親たちの前で「ウルトラガンバ大作戦」と名付けた演技会を行う駿たち。鉄棒は正しく行えば危険なものではなく、また技を行うにはここの鉄棒が必要であることを証明し、おばあさんの鉄棒を守るためだ。
夏の大会で6位以内に入らなければ廃部だと、岬コーチに告げられた駿たち。平均点を上げるためにおばあさんが考え出した作戦は、「ひとり一種目、自分の得意種目で必殺技を完成させて高得点を狙う」ことだった。そんなとき、駿のクラスに転校生・相楽まり子がやってきた。
大会に向けて練習に励む男子体操部。しかし、新堂はひとり悩んでいた。全ての種目に平均点を出す力を持ってはいるが、内田たちの取り入れた新技に対しては、補助もままならないのだ。鬱積した気持ちのままの新堂は、跳馬の練習中にケガをしてしまう。
駿たちの熱意によって、新堂は体操部に戻る。ケガをした新堂の代わりに、駿が大会に出ることになった。大会に備え、おばあちゃんの家で合宿を行う駿たち。おばあちゃんは駿に、跳馬を片手で跳んでみろと指示する。
いよいよ大会が始まった。有力選手の嘉村や、全日本ジュニアのチャンピオン小早川の姿もある。以前に比べ見違えるような素晴らしい演技を行う駿たち。そして東のゆかの演技が始まった。嘉村や小早川ですら練習段階の伸身伸腕プレス倒立に驚く小早川らを尻目に、大技、十字倒立をキメられるか。
片手跳びに一回ひねりを加えた駿の跳馬は9.0の高得点を出した。それに刺激された内田は、二回宙にひねりを加えると言い出す。男子体操部の高揚した意気に乗って演技に入る内田。だが二回宙からひねりに入ったとき、視界によぎった麗子の姿につい見とれてしまい、タイミングを狂わせてしまった。
東の失敗はプレッシャーとなって内田にのしかかる。だが駿の「麗子先輩が見てますよ」という一言がそれを振り払わせた。鉄棒演技を開始する内田。ビビっていたのがウソのように、キレの良い技を見せる。一方、まり子の前には両親が現れ、出発の時間がきたことを告げる。
東と内田の失敗で、もう後がない平成学園。皆の希望を背負いイエーガーに挑んだ真田は、ギリギリのタイミングでバーを掴み、9.25の得点を叩き出す。これで9.0の演技構成の駿にミスがなければ、6位入賞を果たして廃部は免れるはずだった。しかし上位チームの得点が、予想を上回ってしまう。
他の演技は全て終了し、あとは駿の鉄棒を残すのみ。まり子の言葉を胸に、駿が演技を開始すると、注目する場内全員が驚嘆の声を上げた。駿は演技構成を変え、必殺技の片手車輪を繰り出したのだ。そして更に、片手車輪からの離れ技、ギンガー宙返りをキメる!
東京駅へ向かったまり子を追って、駿たちを乗せた岬コーチのワゴンが走る! 高速道路をなりふり構わず突っ走るが、突然のガス欠によって大きなタイムロスを強いられてしまう。まり子の乗る新幹線の発車時刻が迫る中、果たして駿はまり子との別れに間に合うのか。
夏休み。前大会での種目別制覇が認められた駿たちは、全日本ジュニアの強化合宿に招待された。道中、北海道から合宿にやってきた斎藤と出会う。種目別優勝をしたことで自信満々の三バカトリオの真田、内田、東だったが、合宿に参加している全日本ジュニアの選手たちのレベルの高さに驚く。
モリスエ選手の足跡に届くどころか、天井をぶちぬいてしまった駿。その様子を見た全日本ジュニアの外山コーチは、天井に当たっていなければ、鉄棒の真上に落下し、両足の骨が飛び出すほどの大怪我を負っていただろうと告げる。その言葉がふと気になる駿だったが…。
鉄棒から手が離せなくなってしまった駿。おばあちゃんは合宿での様子を岬コーチから聞き、外山コーチの言葉で駿が恐怖の暗示にかかってしまったと見抜く。このまま暗示から逃れられなければ、駿の選手生命にかかわる。そんなとき、麗子が駿を遊園地へデートに誘う。
駿の前に突如現れた元体操世界チャンピオン、セルゲイ・アンドレアノフ。彼は鉄棒離せない病など一発で治ると豪語する。一方、三バカたちに麗子が驚くべき情報をもたらす。一ヶ月後に開催される全日本ジュニア種目別選手権に、平成学園男子体操部が招待されたのだ。
アンドレアノフの指摘した平成学園男子体操部の欠点、それはバク宙の高さが低すぎるというものだった。コーチを受けたければ25センチ高く跳べと言うアンドレアノフ。自分の選手たちに致命的な欠陥があると言われた岬コーチは、プライドを賭けて25センチの壁を超えさせようと決意する。
アンドレアノフのコーチのもと、全日本ジュニア種目別選手権に向け練習に励む駿たちのところへ、小早川が一本のビデオテープを持って現れた。そこに映っていたのは、まだデビューすらしていない西堀製薬ジュニア体操クラブの、完璧な演技を行う選手たちだった。
いよいよ全日本ジュニア種目別選手権が始まった。そこにはあの李軍団や、合宿で出会った斎藤の姿もあった。最初の種目はゆか。嘉村が渾身の演技でチャンピオン小早川を超える得点を叩き出す。しかし、李軍団の香田がそれを遥かに上回る高得点を出した。残る演技者は真田だけだ。
真田のゆかの演技が始まった。技の難度は平凡なものだが、カメラマンはその動きを追い切れないことに訝る。真田の宙返りは、李軍団の香田よりも遥かに高かったのだ。ダイナミックな真田の演技に観客の声援が集まる。調子に乗った真田は、ウケを狙って突然フィニッシュ技を変更する。
男子あん馬。李軍団・増本は高度な技を繰り出して高得点をマーク。しかし内田は強気だった。「あん馬の歴史を変えるオリジナル新技」を披露するつもりなのだ。そして内田の演技。それはあん馬の上で倒立、そのまま平行移動し、宙返りして下りるという前代未聞の技だった。
李軍団の内田イジメを知った東は、義憤に燃えてつり輪の演技に挑む。先に演技を終えた李軍団・嵯峨の得点は9.85。東は持続の困難な力技を次々に繰り出し、会場の度肝を抜く。嵯峨ですらその演技に圧倒されるが、得点は9.60。そのとき、観客席からアンドレアノフが飛び下り、審判に詰め寄った。
アンドレアノフのパフォーマンスもむなしく、東に加点は与えられなかった。採点の基準が技の難易度にあるからだった。しかし観客の東に対する大声援は、その演技が優勝した李軍団の嵯峨を超えるものだったことを示していた。釈然としない思いが燻ぶる嵯峨は、内田と駿に向けて爆発する。
紙一重のタイミングで三回宙を成功させた内田に、観客たちは万雷の拍手を送る。優勝しても観客の支持を得られない李軍団に動揺の色が浮かぶ。種目は平行棒へと移り、平成学園の演技に触発された李軍団・大池は、自分たちはもっと凄い技ができると、演技構成を変えてE難度の大技ベーレに挑む。
競技はついに最終種目、鉄棒を残すのみ。李軍団の増本寛は高何度の離し技・ゲイロードを見せ、9.70を叩き出す。コーチとして、李がアンドレアノフより優秀だと勝ち誇る李軍団。アンドレアノフが李以上のコーチであることを証明しようと、斎藤は彼から教えを受けたE難度のダブルコバチに挑む。
駿の演技が始まった。皆の見守る中、次々に素晴らしい技を決める駿。そして人々は、駿の背中に羽ばたく翼を見る。10点満点の演技。万雷の拍手。怒涛の歓声。李東生と彼の軍団は、“楽しい体操”への敗北を知る。藤巻駿の“ガンバ!”が、自ら奇跡を掴み取ったのだ。