陰気な少年双一には秘密があった。クラスでは不気味がられながらも相手にされず、家族の中でも浮いた存在ではあるが、双一の自己評価はまったく違う。なにしろ「超人的な能力」を持っているのだ。それを知らない周囲の者を心の中で見下しながら、深夜の杉林を訪れる双一。彼の能力とは、不気味な呪いをかける力だった。
大学の映画サークルに所属する岩崎は、ある日見かけた雑誌の中のモデルの異様な風貌が頭から離れず悩まされていた。その記憶がようやく薄れかけた頃、映画サークルでは主演女優を公募することになる。応募書類の中には、岩崎が雑誌で見かけたモデルが。岩崎の反対にも関わらず、監督の織田が彼女の採用を決めてしまう。
八年前、幼稚園生の頃に住んでいた街で再び暮らすことになった龍介。かつての友人たちもいるはずの街だが、龍介の顔は晴れない。その街には交差点に立って最初に通りがかった者の言葉で吉凶を占う、「辻占い」の風習があった。龍介が越してきてしばらく経つと、四つ辻に立ち霧の中に現れる美少年の噂がささやかれ始める。
裕史の隣の家に住む少女・梨奈は、生まれつきの病気で自宅から一歩も外に出ない生活を送っている。彼女の腕に無数の穴が空いているのを見てしまった裕史だが、彼には亡くなった祖父の体にも同じような穴が空いているのを見た記憶があった。しばらく経ったある日、梨奈の症状が回復する。
洋館に住む押切は、ある夜家の廊下でクラスメイトの未央が怯えた様子でいるのに出くわす。彼女は心配する押切から逃げるように、姿を消してしまった。翌日、何事もなかったように振る舞う未央の様子を見て、あれは異次元の未央の姿だったのではないかと考える。
ヒロシは父親が購入した安い中古住宅に家族三人で引っ越してきた。新居の右隣は窓がひとつしかない変わった家で、挨拶をしようと呼び鈴を鳴らしても反応がない。近所の人によると、住む人の姿は見かけないものの、夜になると二階のひとつしかない窓に人影が映るという。
寝ている相手の耳元で優しくささやくと、その声の主の夢を見るようになり意識してしまうという「アリストテレス」。これを行い彩子の夢の中に現れた岸本が、同じく夢に出てきた男に殺されてしまう。この事件後、彩子の部屋は常に家族から覗かれるようになった。家族の異常な行動を相談すべく、叔母の元に向かった彩子は…。
突然記憶をなくしてしまった理佐は、牧田という男に送られて帰宅した。よほどショックなことがあったのか、理佐は何も思い出すことができず、巨大な毛虫の幻まで見るようになってしまう。彼女の恋人であり、婚約もしていたらしい牧田はそんな理佐を気分転換に散歩に誘い、そのままふたりは牧田の家に行くことになるが……。
新進画家・森光夫の個展「ナナのアンニュイな世界」は大いに盛り上がっていた。しかし会場に現れた美女トミエは森に対し、モデルの女性を変えたら絵がもっとよくなると言い残して去る。再び現れたトミエをモデルに絵を描くことになった森だが、できあがった作品を見たトミエは「期待はずれだった」と断じる。
富士山の裾野にある唯の家は、焼肉屋を営んでいた。唯は、脂性の父、サラダ油を飲む嗜癖を持ちこっそり自分を虐める陰湿な兄と三人暮らし。脂にまみれてべとつく自宅が大嫌いで、眺めると爽やかな気分になれる富士山が大好きだった。脂に対する嫌悪感から、唯はいつしか空気に含まれる油の濃度まで感じ取れるようになり−−
超自然現象の存在を信じる麻衣子たちのクラスに、転入生・束野がやってきた。散歩をすると不思議な体験をするという彼を、「超自然同好会」に誘う麻衣子たち。「超自然同好会」には超能力者の柴山や、霊の姿を見ることができる北川といったメンバーがいたが、束野が仲間になったことで、彼らはそれまでにない体験をする。
南米から帰国した尾木は、命がけで持ち帰ったという壺を友人の杉男に見せていた。その壺は尾木がジャングルをさまよいたどり着いた集落で土産に持たされたもので、中には蜜が入っていた。命がけで採取されたというその蜜を杉男に分け与える尾木。杉男はあまりのうまさに感激し、その味が忘れられなくなる。
美しい女学生・川上富江が殺され、その死体がバラバラにされて捨てられた。猟奇的な事件に、同級生や教師たちは動揺を隠せない。事件が起きたのは遺体発見の前日、課外授業が行われた日だったが、不審者の目撃情報などは一切なかったという。そして葬儀の夜、担任教師の高木は、宿直室で信じられないものを目撃した。