1993年カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)、1994年セザール賞新人監督賞受賞作品。全てフランス郊外のスタジオにセットを組み撮影されたが、穏やかで細かい映像の美しさは、まるでその情景から香りが漂ってくるかのような錯覚を覚える。強い日差し、通りの喧騒、雨上がりの土の匂い、露に濡れた緑と風、料理の湯気やスープから漂う香草の香り、そして、少女のちょっとした仕草や視線のいとおしさ…。幻想的な音楽もまた一層作品を引き立て、未だファンの心を掴んで離さない傑作である。
出演
トラン・ヌー・イェン・ケー,
リュ・マン・サン,
トルゥオン・チー・ロック,
グェン・アン・ホア,
ウ゛ォン・ホア・ホイ
制作総指揮:クリストフ・ロシニョン
監督,脚本:トラン・アン・ユン
撮影,照明:ブノワ・ドゥローム
音楽:トン・タ・ティエ
美術:アラン・ネーグル
1951年ベトナム、サイゴン。浪費家の家長の家に雇われ、田舎から奉公にやってきたムイは10歳の少女。家には働き者で優しい母と3人の甘やかされた息子たち、孫娘を亡くしてから引きこもっている祖母がいた。ムイは、年老いた先輩奉公人のそばで働きながら、料理と掃除を習い一家の雑事を懸命にこなしていく。ある晩、家長が一家の蓄えを持って消えてしまい、家族は苦境に陥る。そしてムイは、長男が連れてきた友人クェンに出会い、淡い恋心を抱くようになる・・・。10年後、美しく成長したムイは、音楽家になったクェンの家に奉公に出る。恋人がいながら、クェンはムイの献身的愛情と花に対する嗜好に気付きはじめて・・・。