ふたつの大国の境界に位置し、共同委任統治された街・エリダナには<異貌のものども>や犯罪者を狩る攻性咒式士がいる。そのなかにガユスとギギナもいた。ふたりは緩衝区から現れた<竜>の討伐へ向かう。生き残れば、役所の課長の小言に報奨金の理不尽な値切り、増える借金。不幸が積み重なる生活。それでも街はエリダナ祭を前に浮かれ騒ぐ。祝祭の裏側では、咒式士を狙った連続殺人事件が多発していた――。
ガユスの元に舞いこんだのは、学生時代の悪友・ヘロデルからの仕事の依頼。政府機関で働く彼からもたらされたのは、お忍びでエリダナを訪れた、モルディーン枢機卿長の観光案内と警護という大役だった。国家の重要人物からの依頼に疑問を抱きながらも、ガユスとギギナはモルディーンの『観光旅行』につきあわされる。初日の任務を終えた夜、ふたりはニドヴォルクと名乗る女――咒式士連続殺人犯と出会う。
魔女ニドヴォルクの、強大な重力咒式の嵐に追い立てられ、ガユスたちは必死の策で逃げだす。狙われる理由もわからぬままに次の朝を迎える。散々な目にあっても、遂行中の任務は待ってくれない。モルディーンの観光旅行は表向きで、七都市側のある重要人物との秘密会談に随行することだと判明。会談場所では暗殺者による襲撃を受ける。必殺の咒式の応酬の末に、ガユスは瀕死の重傷を負ってしまう。